予約に驚く

 あいかわらず図書館を存分に活用させてもらう日々。
 インターネットで予約して借りる方法にも、もうすっかり馴れた。
 たまに、予約数が100くらいの人気の本も予約したりする。そういう本ってたいがい、ちらと読んでみたいだけの本だったりする。本屋にない本を探して借りるという用途だけでなく、こういう、案外どうでもいいんだけど、高くはないからつい買っちゃいそうな本こそ、実は図書館で借りるのにちょうどいいのだとある時気づき、読みたい本とは別に、気長に待つつもりでついでに予約を入れるようになった。
 予約状況のページを時々覗くと、数ヶ月かけて着々と減っていた予約数が、ある時からぱったりカウントダウンしなくなったりする。ああ、だれか延滞しまくってんだなあと思う。そして、結局そこからさらに何ヶ月経っても予約数が1つも減らなくなってしまったりして、あああ~、やっぱり、いるんだよな~、だらしない人たち、と笑ってしまう。でも、亡くなった夫の遺品を整理していて図書館から借りていた本を見つけ、何ヶ月も延滞していた本を返しに行くところから展開するドラマを前にBSで作ったことがあるので、そういう小さいドラマもあるだろうなとも、いくつか想像して楽しんでみたりする。
 当然、ベストセラーを図書館で借りて読む人もけっこういるんだろうなと思って、ふと、「悼む人」が直木賞を受賞した時に、思いつきでその予約数を検索してみた。
 なんと、予約数、1755!
 予想していなかった数字に驚愕し、買えってば、と一瞬つぶやいた。横浜市だけでこんな数ということは、全国では何十万(ヘタするともっと?)になるということだ。それだけの人たちがもしこの本を買ったとしたら、ものすごい金額の印税が作家に入るはずではないか。それだけのお金があれば、天童荒太さんはこれからの数年をまた作家活動にのみ専念できるはずだ。
 が、次の瞬間、待てよ、と思い直した。
 天童荒太さんは、かつて、読者からのフィードバックを真摯に受け止めたことで精神的にまいってしまい、本当に倒れてしまったこともある人だ。また、単行本を文庫にする時、加筆訂正という範囲をはるかに超えて頭からすべてを新作として書き直してしまったりした人だ。決して最初からお金のために書いていない。そしてこれは、天童荒太さんが何年もかけて書き上げた渾身の作である。そんなことは読書好きの人ならみんな知っている。だから、できればちゃんと買って読むのが誠意だと思う人の方が多いはずである。ということは、ここに予約している人は、この本をどうしても読みたいけれど、金銭的に買う余裕のない人たちなのだ。新作は無理でも古本で買ってしまうということもできない。そうでなければ、さすがに1755番目という順番を待つという忍耐はもてないはずだ。つまり、この予約をしている人々は、まさに天童さんにとって、この本を読んでもらいたい人びとなのだろうと、勝手なミニドラマを想像して、動揺を抑えることにした。
 それにしても、いったい、今予約すると、自分の順番になるまでにどのぐらいかかるんだろう。
 ちなみに、自分の本を検索してみた。(やると思ったでしょう)
 予約数0。……か、借りやすい。
 でも、いまや絶版になってしまった僕の本を、もしなにかのきっかけで誰かが読みたいと思った時、図書館という存在があることは、僕にとっても、とても嬉しい。